古里だより

古里だより   水無月(一)


「すてきなブックカバーをつくろう」
        講師 木村美穂さん グラフィックデザイナー

2018/6/11更新



日 時  平成30年7月29日 (日)   各回定員5名 事前予約制
     一回目 10:30~11:30
     二回目 13:30~14:30
場 所  本館講義室
対象者  小学生以上の児童と保護者  付き添いの保護者の参加も可能
内 容  好きな本を持参し、その本にあったブックカバーを作成する
持ち物  お気に入りの本 はさみ 線引き マジックペン 蛍光ペンなど
参加費  小・中学生は無料   (保護者の入館料500円)

   申し込み方法  直接電話でお申し込みください。
          井上靖文学館 055-986-1771
  

「西岡屋」のモデル・西村屋

写真のカバーは講師の木村さんが制作したものです。





古里だより 皐月(二)


修学旅行

2018/5/21更新



5月8日(火)東京の筑波大付属中学校3年生38名が来館されました。恒例の修学旅行、文学研究グループの生徒さんです。 それぞれ目的を持っての来館ですので、すぐメモを取ったり展示品をじっくり見たりして、貴重な時間をすごされました。 テーマは「井上靖のふるさと」「川端康成と伊豆」「文学作品に描かれた伊豆」などさまざまです。見学の最後に井上靖研究グループが代表してこれまでの研究内容を発表してくれました。井上作品をよく読み調べていると同時に、自分の意見をしっかり持っている素晴らしいものでした。この後、天城湯ヶ島へ向かい、2泊3日、文学の里伊豆を満喫した旅行になったようです。   

「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 皐月(一)


井上靖の生誕記念日

2018/5/8更新



ゴールデンウィークは多くのお客様が来館されました。特に5月6日の生誕記念日には300名近くの方がいらっしゃり、先着111名のガラポン抽選会は開館2時間ほどで終了してしまうほどでした。 混雑してゆっくり展示物をご覧いただけない状況でしたので、ぜひもう一度クレマチスの丘においでください。これからは早咲き大輪系クレマチスの花が見どころとなります。
 
「西岡屋」のモデル・西村屋






古里だより  卯月(三)


瓊花(けいか)

2018/4/26更新



2013年に文学館中庭に植樹した鑑真和上遷化1250年記念の瓊花(けいか)の花。今年はいつもの年より早く咲き、見頃になってきました。昨年より花の数も多くなりさまざまな位置から写真が撮れます。

「西岡屋」のモデル・西村屋






古里だより  卯月(二)


出張授業

2018/4/26更新



伊豆市立天城小学校6年生と、三島市立坂小学校6年生への出張授業を行いました。
学校図書の教科書『「みんなと学ぶ国語」6年 上』の巻頭詩は井上靖の「出発」です。井上作品が教科書に掲載されているよい機会なので、学校を訪れ子どもたちと詩を読み、その後井上靖の紹介をしました。
天城小6年生の授業は、詩のことばをもとにして、古里、子どもころの思い出、友情、競い合いなど作者の思いを読み取りました。遠くの山は「天城山のことだ」「私たちも同じ気持ちになる」「緊張していることとこれから頑張ろうとする気持ちが混ざっている」など素晴らしい意見が出されました。そして、4月の最初に出てくる意義を子どもたちと一緒に考えました。
天城小には旧湯ヶ島小にあった卒業記念の木彫り、「地球上で一番清らかな広場」の額があり、最後にみんなでこの詩を朗読しました。


「西岡屋」のモデル・西村屋

地球上で一番清らかな広場          井上靖

地球上で一番清らかな広場。
北に向って整列すると、
遠くに富士が見える。
廻れ右すると天城が見える。

富士は父、天城は母。
父と母が見ている校庭で
ボールを投げる。

誰よりも高く、美しく、
真直ぐに、天にまで届けと、
ボールを投げる。

「西岡屋」のモデル・西村屋

坂小では、詩のお気に入りのことばをさがしました。
「白いスタートライン」「友をぬいたり 友にぬかれたりする」「あのふしぎにしずかで、ゆたかな、出発の時が好きだ。」
など、自分がなぜそこを選んだのか理由をしっかり発表できました。
両校の6年生、授業態度が立派でこれから1年間最上級生として学校を引っ張ってくれることでしょう。





古里だより  卯月(一)


出発

2018/4/5更新



春、桜前線北上とともに、新年度が始まりました。
春休み、親子で来館するお客様がいらっしゃいました。展示物の中から自分の小学校で使っている教科書を探し、驚いた女の子さんがいました。
静岡県東部の多くの学校で使用している「みんなと学ぶ 国語」(学校図書)の6年生の巻頭詩は井上靖の「出発」です。
白いスタートラインにならび希望にあふれる人々に贈ります。

「西岡屋」のモデル・西村屋


出発          井上靖

ぼくは
マラソン競争で
白いスタート・ラインにならぶ時が好きだ。
かるく腰をうかせ
きっと遠い前方の山をうかがう
あの瞬間のぴんと張った気持が好きだ。
やがて笛は鳴りひびくだろう。
ぼくたちはかけ出す。
校庭を一周し、町をぬけ、村を通り、おかをこえる。
友をぬいたり
友にぬかれたりする。
みなぎってくる
いろいろの思いをしずかにおさえて
友と友の間にはさまれて
先生の笛の合図をまっている
あのふしぎにしずかで、ゆたかな、出発の時が好きだ。

「西岡屋」のモデル・西村屋







古里だより 弥生(二)


瓊花(けいか)まつり

2018/3/27更新



遣唐使たちの熱き思いと運命を描いた小説「天平の甍」にちなみ、2013年に植樹した瓊花(けいか)の花。 4月下旬の見ごろに合わせて、瓊花(けいか)まつりを開催いたします。ぜひ可憐な花をご覧ください。

【第5回 瓊花(けいか)まつり】
とき:4/28(土)~5/6(日)
当館オリジナルグッズ、瓊花(けいか)のしおりを発売します。
なお、井上靖111回目の生誕記念日5月6日(日)は入館料無料となります。

詳細 http://inoue-yasushi-museum.jp/

【お問合せ】
井上靖文学館:電話055-986-1771
(毎週水曜は休館日です。なお5月2日は開館します。)

「西岡屋」のモデル・西村屋






古里だより 弥生(一)


春を告げる梅

2018/3/2更新



井上靖のふるさと伊豆でも梅が満開のようです。
本館で編集・発行した『教科書で読んだ井上靖』に掲載されている、詩「愛する人に」の中に

梅のように、
あの白い五枚の花弁のように、
香ぐわしく、きびしく、
まなこ見張り、
寒夜、なおひらくがいい。

という一節があります。春は一歩一歩近づいています。引き続き、「教科書で読んだ井上靖」展を開催中です。

「西岡屋」のモデル・西村屋







古里だより 如月(四)


出張展示のお知らせ

2018/2/19更新



三島市立図書館「ふるさと文学者コーナー」において「井上靖の世界」展示が5月30日(水)まで行われています。伊豆を舞台にした多くの名作を生み出した井上靖、三島にゆかりの作品などの展示をご覧ください。

「西岡屋」のモデル・西村屋

また、三島に住み、多くの映画作品のメガホンを取った五所平之助監督の井上原作による映画『わが愛・通夜の客』、『猟銃』、『白い牙』の紹介もしております。

「西岡屋」のモデル・西村屋

出張展示「井上靖の世界」 会期:2月1日(木)~5月30日(水)
開場:三島市立図書館1階「ふるさと文学者コーナー」
*どなたでもご覧いただけます
問い合わせ先   三島市立図書館 電話 055-983-0880





古里だより 如月(三)


文学講座報告

2018/2/19更新



2文学館講座 「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」
講師 和久田雅之氏 (静岡理工科大学講師)

穏やかな日和の2月4日(日)、文学講座「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」を開催しました。 井上靖は大正9年13歳のとき、父親の新任地(浜松衛戍病院長)である浜松に母・妹弟とともに移りました。作品『帽子』を読みながら当時の中学受験事情、浜松中の成績等も話されました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「本当に真剣になった時代があったとすれば、この浜松での一年間ではないか」と書かれている部分から浜松時代に強い意志を持つことを学び、また物事に立ち向かう自信がついたとまとめられました。






古里だより 如月(二)


知られざる井上靖の映画脚本

2018/2/6更新



2月1日(木)、井上靖の新資料「知られざる映画脚本」発見について、国立近代美術館フィルムセンターにて共同記者発表を行いました。

「NPO法人 古き良き文化を継承する会」代表の根本隆一郎氏より依頼を受け、当館も資料調査に協力。さらに、脚本の所蔵先のフィルムセンターの協力も得て、このたび発表の運びとなりました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

これまで井上靖が京都大学在学中に新興キネマという映画会社の脚本部に籍を置いていたことは確認済みでしたが、関わった作品の映画化は1本もない、とされてきました。

今回発見に至った内田吐夢監督の映画「白銀の王座」(昭和10年公開)は、これまで内田氏が原作脚色監督のすべてを担っているという表記になっていました。しかし、今回の調査で、井上靖の証言(対談記事)や妻ふみの文章などから、井上靖が関わっていた可能性が出てきたのです。

「白銀の王座」は、スキーにやってきた都会の男女と、奇怪な山の男の物語。残念ながらフィルムは現存しませんが、脚本や掲載誌、ロケ写真など、関連資料は残されています。 今まで注目されてこなかった井上靖と映画との繋がりや、作品への影響について、今後研究の幅が広がっていくのではないかと思います。

「西岡屋」のモデル・西村屋

この発見につきましては、解説を『ねりま・映画・ものがたり』(2018年3月 練馬区刊行)へ発表、解説と脚本を『井上靖研究第17号』(2018年夏・井上靖研究会発行)に掲載予定。また当館にて企画展「銀幕を彩った井上靖の文学」(仮)を今秋開催し、資料の初公開を予定しています。



古里だより 如月(一)


あすなろ忌の報告

2018/2/6更新



井上靖を偲ぶ「あすなろ忌」が1月28日伊豆市湯ヶ島にて行われました。寒波の影響で熊野山は降雪がひどく、今年は、旧居跡で献花となりました。
その後、天城会館にて井上靖作品読書感想文・感想画コンクール入賞者の表彰式を行いました。それぞれの思いがことばや絵となって表現され、すばらしい作品ばかりでした。

「西岡屋」のモデル・西村屋

午後は日本中国文化交流協会の理事である佐藤純子さんが「井上靖と中国」と題して講演を行いました。井上靖中国訪問27回中16回随行した中で、思い出に残る井上靖の人間像を語られました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

途中で雪がちらつきましたが、地元の方々の温かなおもてなし、富士山や天城の山々に見守られ作家を偲びました。

「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 睦月(三)


井上靖と三島

2018/1/18更新



伊豆文学フェイスティバルの応援企画として、三島市立図書館にて出張展示を行います。
伊豆を舞台に多くの作品を執筆した井上靖。
中学時代に下宿していた三島の街とのつながり、ゆかりの作品を紹介します。

出張展示「井上靖の世界」
会期:2月1日(木)~5月30日(水)
開場:三島市立図書館1階「ふるさと文学者コーナー」
*どなたでもご覧いただけます


「西岡屋」のモデル・西村屋
小説「少年」を収録




古里だより 睦月(二)


文学館講座「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」

2018/1/9更新



小学校6年から中学1年までを浜松で過ごした井上靖。
当時のことを小説「帽子」や詩「カマイタチ」などの作品に描いています。
家族と過ごした貴重な時間と浜松ゆかりの作品について、『静岡文学散歩』の著者・和久田雅之さんに語っていただきます。


文学館講座「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」
日時:2月4日(日)13時30分~14時30分
場所:井上靖文学館
講師:和久田雅之(静岡理工科大学講師)
参加:定員20名・事前予約制・参加費は入館料のみ

「西岡屋」のモデル・西村屋
小説「満ちて来る潮」の舞台・浜松市の佐久間ダム

「西岡屋」のモデル・西村屋
「静岡文学散歩」



古里だより 睦月(一)


新年のご挨拶

2018/1/9更新



本年もよろしくお願いいたします。
2018年、当館は開館45周年を迎えます。


「西岡屋」のモデル・西村屋

1月28日(日)は伊豆市にて井上靖追悼「あすなろ忌」を、2月4日(日)には当館にて文学館講座「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」を開催いたします。

最新情報は井上靖文学館facebookをご覧ください https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum



古里だより 師走(四)


年末年始の休館のお知らせ

2017/12/17更新



【年末年始の休館ご案内】
2017年12月26日(火)より2018年1月5日(金)まで、井上靖文学館を含むクレマチスの丘の全ての施設は休業いたします。

2018年、当館は開館45周年を迎えます。
1月28日(日)は伊豆市にて井上靖追悼「あすなろ忌」を、2月4日(日)には当館にて文学館講座「井上靖の浜松時代とゆかりの作品」を開催いたします。

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 師走(三)


あすなろ忌のご案内

2017/12/17更新



井上靖を偲ぶあすなろ忌は、命日に近い1月の週末、ふるさとの伊豆市湯ヶ島にて開催されています。
今回は、井上靖とともにシルクロードを旅した、日中文化交流協会の佐藤純子さんを講師にお招きし、「井上靖と中国」について語っていただきます。
皆さま、暖かい服装でお越しください。

井上靖追悼「あすなろ忌」
と き:2018(平成30)年1月28日(日)10時~15時
ところ:天城会館 劇場ホール
内 容:
10時~ 墓参:熊野山墓地
11時~ 井上靖コンクール感想文・感想画の発表・表彰式:天城会館
12時~ 休憩
12時半~開場
13時~ 講演「井上靖と中国」佐藤純子氏((一財)日本中国文化交流協会 理事):天城会館
*入場無料・全席自由です

「西岡屋」のモデル・西村屋
新疆にて 佐藤純子氏撮影

共 催:伊豆市教育委員会/井上靖ふるさと会
後 援:伊豆市/伊豆市文化協会/ふるさと 井上靖文学館/一般財団法人 井上靖記念文化財団/静岡新聞社・静岡放送/伊豆日日新聞
【問い合わせ】伊豆市教育部 社会教育課(電話0558-83-5476)




古里だより 師走(二)


「氷壁」の背景とナイロンザイル事件

2017/12/17更新



冬晴れだった12月3日、今年最後の文学館講座「『氷壁』の背景とナイロンザイル事件」を開催しました。
『氷壁』は実際に起こったナイロンザイル事件をもとに書かれた山岳小説ですが、その背景、また現代性がどこにあるのか。
『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』著者の相田武男さんに語っていただきました。

相田さんは、掲載紙(当時の朝日新聞)、単行本、文庫本を細かく読み比べ、その違いを述べられました。
また、ナイロンザイ事件と『氷壁』の中で、同じ点、相違点を洗い出し、詳しく紹介しました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「危険を冒すな、冒険を恐れるな」など、登山に対する考え方をナイロンザイル事件の当事者たちから井上が聞き、小説に活かしたこと。
物語の終盤で主人公が山へ登る時、婚約者が待っている状況を作り、純粋性があらわされていること。
『氷壁』の中で、「強(あなが)ち原子科学の中に、明るい人類の夢や可能性ばかりが詰まっているとは思えませんな。そこにはまた、亡(ほろ)びの可能性も詰まっているわけです」という台詞を原子科学の専門家が述べ、東日本大震災でも同じ状況であることなど、さまざまな点から『氷壁』とナイロンザイル事件が語られました。

「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 師走(一)


広がる本づくり

2017/12/8更新



毎年恒例、町内有志の子どもたちが参加する「長泉わんぱく冒険サークル」にて、広がる本づくりワークショップを開催しました。

今年は、クレマチスの丘の樹をテーマにした展覧会にあわせ作成した「木のたんけんノート」を手に駿河平自然公園を散策した後、ビュフェ美術館を探検しました。
ビュフェ美術館のワークシートには、美術館を探検するためのヒントがいっぱい。
まずは、入り口のクスノキの下に集まって、クスノキの葉っぱを探します。
ちぎってみると、あれ?匂いがする!

美術館探検の後は井上靖文学館へ移動し、広がる本づくりです。
本文を切って、山折り、谷折りと交互に折っていきます。

「西岡屋」のモデル・西村屋

表紙と裏表紙は好きな色紙を選んで、厚紙に貼ります。
いらない部分を切ってから、本文に貼りつけたら完成!

「西岡屋」のモデル・西村屋

それぞれのオリジナルの本ができました。
中にはどんな物語が描かれるのでしょうか。

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 霜月(四)


しろばんばまつりと秋のワークショップ講座

2017/11/23更新



秋晴れの続いた3日から5日の三連休、「第3回しろばんばまつり」と秋のワークショップを開催しました。

しろばんばまつりでは、企画展にちなみ、昭和初期の木製ガラポンが登場。
入館者全員にガラガラとまわしてもらいました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

秋のワークショップ「和とじ本を作ってみよう」では、小学生から大人まで参加いただきました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

基本の四つ穴とじに挑戦。
表紙、背表紙、ひもは自分で選んで組み合わせます。

「西岡屋」のモデル・西村屋

表紙と裏表紙を別の色にしたり、表紙とひもをポップな色合いにしたり、自由な和とじ本づくりとなりました。
それぞれの個性が光っています。

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 霜月(三)


講座「氷壁の背景とナイロンザイル事件」

2017/11/23更新



井上靖の代表作『氷壁』は、ナイロンザイル切断事件をもとに書かれた長編小説です。
冬の文学館講座では、『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』著者の相田武男さんに「氷壁の背景、現代性、ナイロンザイル事件」について語っていただきます。

文学館講座「『氷壁』の背景とナイロンザイル事件」
と き:12月3日(日)13時30分~14時30分
ところ:井上靖文学館2階
講 師:相田武男(『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』著者)
参 加:定員20名・事前予約制・参加費は入館料のみ

「西岡屋」のモデル・西村屋


最新情報は井上靖文学館facebookをご覧ください https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum



古里だより 霜月(二)


出張講座「井上靖が描く真田軍記」

2017/11/6更新



当館では、出張講座のご要望も承っております。
今回は、20年以上の歴史を持つ「修善寺雑学友の会」の10月の会にて、「井上靖が描く『真田軍記』」をテーマに話をしました。

まず、井上靖とほかの作家との繋がりを紹介し、どのような関係だったかを振り返った後、作風の特徴を解説しました。
次になぜ戦国時代を書いたのか、『真田軍記』を書きたかった理由を述べ、『真田軍記』に収録されている四つの短編を詳しく紹介しました。


「戦国時代ほど人間の運命や生き方がくっきりと、あたかも月光に照らされた一本の川筋のように洗われて見える時代はない」
「戦国時代の女性」より

「真田一族は作者の幼少時代の憧憬であり、夢であった。」
「作者の言葉」より

「西岡屋」のモデル・西村屋

『真田軍記』は、真田一族ではなく、真田を取り巻く人々の視点から書かれ、「名もなき人々の努力によって歴史が作られていく」という井上靖の歴史観があらわれています。
例えば「天平の甍」の留学僧たち、「本覚坊遺文」利休の弟子の本覚坊、「風林火山」では軍師・山本勘助など、主人公は歴史上の英雄ではなく、その周りの人から見た視点となっています。

さらに、井上作品にどのようなメッセージが込められているのか、『天平の甍』『氷壁』『わが母の記』から紹介しました。

このような出張講座は、対象の方々によって内容を変えて行っています。
ぜひお気軽にご相談ください。




古里だより 霜月(一)


講座「祖父・足立文太郎と井上靖」報告

2017/11/6更新



台風21号が近づく荒天の中、文学館講座「祖父・足立文太郎と井上靖」を開催しました。
講師は、詩人で井上靖次女の黒田佳子さん。

黒田さんの祖父であり、井上靖の義父の足立文太郎は、京都大学教授などを歴任、解剖学の先駆者として数々の功績を残しました。
特に、井上靖と長女のふみが結婚する際に「彼はいずれ日本一の文士になる」と述べたこと、毎日新聞へ入社するきっかけを作ったことが知られ、研究に生きる男の孤独を表現した小説「比良のシャクナゲ」のモデルとして描かれています。

「西岡屋」のモデル・西村屋

講座では、複雑な井上家と親戚の足立家の家系図についてじっくりと説明した後、足立文太郎が解剖学の道に進む過程やその功績が語られました。

靖の曽祖父である潔の妻ヒロ(『しろばんば』に登場する本妻しな)のもとで育てられたことを知り、参加者は『しろばんば』の世界が広がるように感じ入っていました。

また、その功績は、耳垢の乾湿による体質研究、日本人の動脈・静脈系統など、日本人の人種的な特徴を究明したことです。 現在では常識となっている事象も、従来の皮膚の色や顔の形、毛の性質などの外観上の人類学に対して、「筋や血管、内臓などすべての『柔部』にも違いがあるはずである」とし、新たな視点からの解剖学の研究を行いました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

井上靖にとって、解剖学の道に邁進した義父の足立文太郎をはじめ、椎茸の製造方法の改良・普及に努めた『しろばんば』の椎茸じいさん(父方の祖父)、沼津中学で教鞭を執りながら色彩文化の研究を続けた前田千寸(『夏草冬濤』眉田先生)など、ひとつのことにひたむきに打ち込む情熱と孤独を持った人たちを見てきたことが、彼の作品の根底にある「孤独」に影響を与えたと考えられます。

この日は中国の大学院で「しろばんば」の修士論文を書こうという学生も参加しており、さまざまな質問、感想が飛び交いました。




古里だより 神無月(三)


しろばんばまつり

2017/10/24更新



日一日と秋が深まり、しろばんばの舞う季節となりました。
今年はガラポンとワークショップを行います。
生誕110年記念「教科書で読んだ井上靖」展も好評開催中ですので、ぜひお運びください。


○秋のワークショップ「和とじの本を作ってみよう」
11月3日(金・祝)13時30分~14時30分
定員5名(小学生から大人まで)・事前予約制・参加費は入館料のみ

「西岡屋」のモデル・西村屋

○第3回しろばんばまつり
11月3日(金・祝)~11月5日(日)
昔なつかしいガラポンを開催!
ご入館される方、全員参加できますのでお気軽にどうぞ。




古里だより 神無月(二)


研修会「三島と文学」

2017/10/24更新



井上靖が中学時代に下宿し、生活していた三島市。
三島はさまざまな文人たちが訪れ、児童文学者の小出正吾や詩人の大岡信など三島生まれの文学者を育みました。

秋雨の続く中、三島市の図書担当教員と学校司書を対象とした研修会「秋の研修会 学校図書分科会」にて、「三島が描かれる文学あれこれ」と、和綴じ本ワークショップを行いました。
「三島が描かれる文学」では、井上靖の自伝的小説「しろばんば」「夏草冬濤」「少年」のほか、太宰治「老ハイデルベルヒ」、万城目学「鰻」、現在活躍中の絵本作家のスギヤマカナヨさん、江頭路子(えがしらみちこ)さん、小説家の間宮緑さんを紹介しました。


「西岡屋」のモデル・西村屋

和とじ本ワークショップは、本の綴じ方を体感し、児童・生徒へ伝えていけるよう、研修会で実施することになりました。
和紙とひもで四つ穴とじに挑戦。

紙の切り方、穴のあけ方、ひもの通し方…大人がやってみても、それぞれ個性が出ますね。
きりやカッターをまだ使えないお子さんははさみと穴あけパンチで代用できます。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「西岡屋」のモデル・西村屋

和綴じ本の綴じ方は、ノートや日記帳にも応用できるので、館内でのワークショップでも機会を増やしていきたいと思います。




古里だより 神無月(一)


「祖父・足立文太郎と井上靖のはなし」

2017/10/5更新



井上靖の岳父・足立文太郎は、解剖学者として「日本人の体質の研究」など、さまざまな人種の体質の差異を研究しました。
井上の小説「比良のシャクナゲ」のモデルとして描かれた足立文太郎。
彼はどのような人物だったのか、黒田佳子氏が語ります。


文学館講座「祖父・足立文太郎と井上靖のはなし」
と き:10月22日(日)13時30分~14時30分
ところ:井上靖文学館
講 師:黒田佳子(詩人・井上靖次女)
参 加:定員20名・事前予約制・参加費は入館料のみ

「西岡屋」のモデル・西村屋
黒田佳子氏

「西岡屋」のモデル・西村屋
井上靖の義父・足立文太郎

最新情報は井上靖文学館facebookをご覧ください
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 長月(三)


「教科書で読んだ井上靖」展、はじまりました

2017/9/22更新



生誕110年記念 大人も子どもも!「教科書で読んだ井上靖」展がはじまりました。
本展では、これまで教科書に掲載された様々なことばや実際の教科書を紹介しています。

「西岡屋」のモデル・西村屋

また、井上靖の小学校時代の成績表や、『しろばんば』に登場する先生たちの記録など、珍しい資料を展示中。

「西岡屋」のモデル・西村屋

作品にまつわる「さわる」「きく」「かぐ」コーナーと、好きな色から選ぶ「ことば札」もありますので、ぜひ遊びにいらしてください。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「西岡屋」のモデル・西村屋

書籍「教科書で読んだ井上靖」を販売中です。

「西岡屋」のモデル・西村屋


「教科書で読んだ井上靖」展
会期:2017年9月21日(木)~2018年9月25日(火)
協力:静岡県総合教育センター・伊豆市教育委員会・井上靖ふるさと会
後援:一般財団法人 井上靖記念文化財団




古里だより 長月(二)


フルートの調べ ミニコンサート

2017/9/22更新



少しずつ秋らしい風を感じる季節。
「五感であそぶ井上靖の世界」展の関連イベントとして、「フルートの調べ ミニコンサート」を開催しました。

演奏はフルートトリオLeafの皆さん。
2014年に井上靖追悼「あすなろ忌」で演奏の機会があり、今回は文学館では初めてのコンサートです。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「星に願いを」「サウンド オブ ミュージック」のような名画の一曲から、「赤とんぼ」「小さい秋 見つけた」「もみじ」といった秋のうた、井上靖にまつわる「しろばんばの唄」「舟唄」などを演奏してくださいました。
子どもから大人まで幅広い年代の方が参加。
フルートのあたたかな響きが重なって、館内に広がっていきました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「しろばんばの唄」は、平成6年、旧天城湯ヶ島町(伊豆市)が歌詞を公募したもので、湯ヶ島の夕刻を告げるメロディーとして今も親しまれています。
また、「舟唄」については、1970年代、井上靖がNHKシルクロード取材班と敦煌を訪れたとき、偶然ラジオで流れていた「舟唄」を聴いて、井上靖が「歌詞がいいね」と言ったエピソードを紹介しました。

これからも文学を気軽に楽しめるような催しを開催していきたいと思います。



古里だより 長月(一)


「教科書で読んだ井上靖」展

2017/9/4更新



この秋、生誕110年を記念した企画展「教科書で読んだ井上靖」展を開催いたします。

これまで教科書に掲載された作品、そのメッセージを紹介するとともに、井上靖の小学生時代の資料(成績表など)を展示します。
あなたが読んだあの作品にまた出会えるかも!

「西岡屋」のモデル・西村屋

「教科書で読んだ井上靖」展
会期:2017年9月21日(木)~2018年9月25日(火)

協力・静岡県総合教育センター・伊豆市教育委員会・井上靖ふるさと会
後援・一般財団法人 井上靖記念文化財団




古里だより 葉月(二)


生誕110年記念書籍

2017/8/22更新



生誕110年記念書籍「教科書で読んだ井上靖」を9月に刊行します!

1960年から現在まで約50の作品が教科書に掲載され、多くの子どもや生徒が教科書を通じて井上靖の作品と出会いました。
その中から22作品を選定し、1冊の本を作りました。

「西岡屋」のモデル・西村屋


書名:「教科書で読んだ井上靖」(編集・発行・井上靖文学館)
発行:2017年9月5日(火)
内容:
1・「教科書に掲載された井上作品」
(小学校から高校まで、詩、小説、随筆の22作品)
2・掲載教科書一覧表
3・解説「井上靖と国語教科書」勝呂奏(桜美林大学教授)
仕様:四六判、192ページ
価格:1,000円+税
部数:1,000部限定
デザイン:木村美穂(きむら工房)

○静岡県内の取り扱い店舗
戸田書店:函南店、掛川西郷店、リブレ裾野店、富士店、江尻台店、藤枝東店、富士宮店、御殿場店、静岡本店
長倉書店:サントムーン店、修善寺店
マルサン書店:仲見世店
サガミヤ書店:広野店、デュオ店
クレマチスの丘:NOHARA BOOKS、TREEHOUSE、当館

○県外で購入希望の方は、当館(電話055-986-1771)までご連絡ください。
指定の口座にお振込みいただき、確認後、発送いたします。

この書籍とあわせて、9月21日(木)より「教科書で読んだ井上靖」展を開催予定です!

最新情報は井上靖文学館facebookをご覧ください
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 葉月(一)


夏のワークショップ

2017/8/11更新



今年の夏のワークショップは「水彩ぬりえにちょうせん!」と「豆本を作ってみよう!」を行いました。

初回の「水彩ぬりえにちょうせん!」は、当館のケイカの花や「まんがで読む井上靖」を手掛けてくださっている絵本作家の江頭路子さんを講師に実施しました。
透明感あふれる絵を描く江頭さん。この日のために『しろばんば』の川遊びの場面を特別に描いていただきました。


洪作はすぐ真っ裸になって瀬へ飛び込み、浅いところでばちゃばちゃやった。淵は深くて背が立たないところがあった。洪作が来たことで、幸夫も芳衛もまた瀬へ飛び込んで来た。洪作たちは何回も水を浴び、何回も冷えた体を石に当てて背を干した。子供たちは石で体を温めることを甲羅を干すと言った。実際に河童が甲羅を干すのに似ていた。
『しろばんば』より


まずは江頭さんのお手本。
水の流れている部分にクレヨンで流れを描き、マスキングします。
そのあと、塗る場所に水をのせてから、薄く絵の具で塗っていきます。

「西岡屋」のモデル・西村屋

では、本番のはじまり。
川を想像しながら、着色していきます。色を試しに塗ったり、重ねていったり・・・

「西岡屋」のモデル・西村屋

「西岡屋」のモデル・西村屋

それぞれの夏の風景ができあがりました。

「西岡屋」のモデル・西村屋


8月は「豆本を作ってみよう!」を開催しました。
小さな小さな豆本ですが、表紙、見返し、本文、花切れ、ひも(スピン)をつくるので、本と同じ構成になります。

本文を折り、見返しを貼り、表紙を作ります。
表紙の紙とひもは、参加者それぞれ好きなものを選びました。
表紙は厚紙を入れるので、ハードカバーのようなしっかりした堅さに。ひも、花切れを貼り付け、最後に本文と表紙を付けたら完成!

「西岡屋」のモデル・西村屋

「西岡屋」のモデル・西村屋

本がどんなふうに作られているのか、作りながら仕組みが分かります。
参加者手のひらに載せて撮影。

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 文月(三)


夏休みの子どもたちへ

2017/7/27更新



井上靖生誕110年。
この夏、当館では、小中学生向けのパンフレット「井上靖 ふるさとのことば」と「井上靖ってどんなひと?」を作成しました。
子どもを対象にした案内は初めての試みです。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「井上靖 ふるさとのことば」は、作家の紹介とともに、短い詩を四つ掲載しました。
掲載した詩「千本浜」や「地球上で一番清らかな広場」は、この地域が舞台になった作品です。
文学館のある長泉町の小中学生や三島市の小学生へ配布しました。

「千本浜」
千本の松の間に千個の海のかけらが挟まっていた。
少年の日、私は毎日それらを一つずつ食べて育った。

「井上靖ってどんなひと?」は、来館した子どもたちへ渡すパンフレットです。
『しろばんば』や『あすなろ物語』にまつわるクイズに答える、書き込み式になっています。

「西岡屋」のモデル・西村屋

パンフレットは、文化庁の「地域の核となる美術館・博物館支援事業」によって作成しました。
絵本作家の江頭路子さんによる、かわいらしいイラストも必見です。

「西岡屋」のモデル・西村屋

時を同じくして、クレマチスの丘で開催中の「木」をテーマにした企画展をめぐる「木のたんけんノート」もスタートしました。
ヴァンジ彫刻庭園美術館、ビュフェ美術館、井上靖文学館のスタンプを集めながら、紹介されている木や、身のまわりの木々について考えてみませんか。




古里だより 文月(二)


夏の100冊!

2017/7/8更新



7月に入り、夏休みが近づいてきました。
全国の書店では恒例の夏フェアを開催中ですね。

「西岡屋」のモデル・西村屋

今年は、「新潮文庫の100冊 2017」に『あすなろ物語』が選ばれました。
新潮文庫ベストセラー20位にもランクインしています!
井上靖の作品と出会うきっかけとなりますように。

最新情報は井上靖文学館facebookをご覧ください
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 文月(一)


井上靖命名のBar

2017/7/8更新



東京都中央区日本橋。東京駅八重洲口から歩いて数分のところに、井上靖が命名したバー「ぺしゃわーる」があります。

「西岡屋」のモデル・西村屋
昼間は喫茶店、19時からバーになります。

オーナーが井上靖と親しく、1978~79年頃に命名してもらったそうです。
「以前は銀座にあり、その頃は漢字だったが、読むのが難しいという理由で現在の平仮名になった」とのこと。
オーナーは若い頃に井上と知り合い、ずっと交流が続いたそうです。

「旅」

毎年、年の初めに旅の計画を樹てる。

一九七六年は 布路沙布邏(ペシャワール)。

クシャン王朝の夏の都。
柘榴(ざくろ)の木の多い町。
アレキサンダーが午睡をとった城市。

そこの丘陵の斜面にあるホテルの一室で、
私は、東京に居るもう一人の私に、
未解読の孑孑(ぼうふら)のような文字で、
絶縁の手紙を認めたいのだ。

1976(昭和51)年1月、日本ペンクラブ「PEN」へ発表。詩集『遠征路』収録。

「西岡屋」のモデル・西村屋

店内に飾ってある「旅」という詩の原稿。書斎で書いたものをいただいたそうです。
井上は1978(昭和53)年10月にパキスタンの街、ペシャワールを訪れています。

オーナーの方と、好きな作品だという「星と祭」や「グウドル氏の手套」の話、思い出話を聞くことができました。
この日は、「コーヒーがおいしいからおすすめ」ということで、ウォッカベースでコーヒー風味のブラックルシアンをいただき、家路へ。

みなさんも文豪ゆかりのお店に足を運んでみませんか。




古里だより 水無月(四)


まんがで読む井上靖~第五話~

2017/6/24更新



生誕110年記念「まんがで読む井上靖」
第五話「靖、文学に目覚める!」沼津編完結です。


「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 水無月(三)


金時娘と「山の少女」

2017/6/24更新



初夏の風が爽やかな六月初旬、金太郎伝説で知られる金時山へ出かけました。
金時山は、神奈川県足柄下郡箱根町、南足柄市と静岡県駿東郡小山町の境に位置し、標高1,213メートル。
山頂には二つの茶屋があり、その一つ、金時茶屋の看板娘である「金時娘」は、井上靖の短編小説「山の少女」に登場します。
1952(昭和27)年の新緑の頃、井上靖は、金時山の麓である箱根町仙石原の旅館で、「金時娘」こと・小見山妙子さんに会いました。翌日、金時山へ登り、取材。その年の11月、『改造』に短編「山の少女」を発表したのでした。

<あらすじ>
私は若い新聞記者から山頂で一人生活している山の少女・小早川那美子の小説の原稿を預かった。
この作品は本当に山の少女が書いたものだろうか?
新聞記者と私は山頂の茶屋を目指して登り始める……

山を降りると天気の予想がつかないで不自由だという。山頂に居る限りでは、めったに晴雨の判断を誤ることはない。丹沢山地から吹いてくる東北の風か、富士の方から吹いてくる北西の風の場合は必ず半日もしないうちに雨は上がる。またどんなに快晴であっても駿河湾、相模湾の方から吹いてくる南西、東南の風だと、雨か曇りになる。
秋から冬にかけて、丹沢の方に狐火が見える。数珠のように橙色の火が一列に並んで、ゆっくりと移動して行く。
流れ星は必ず駿東郡東部の河洲に落ちる。


「西岡屋」のモデル・西村屋
前回は金時神社から登りましたが、今回は足柄峠から歩きます。足柄駅の金太郎。

箱根笹と熊笹の原が長いこと交互に続いて、初めはゆるやかな上りだったが、そのうちに道の勾配は次第に険しくなり、それにつれて路面に岩石が露出して歩きにくくなった。私たちは途中で幾組かの若い男女の登山者たちと行き違った。山桜の造花のような白い花が所々の藪蔭に咲いていて、鶯の鳴き声が時々斜面の下の方から聞えて来た。


「西岡屋」のモデル・西村屋
足柄峠から富士山を見ながら。

「西岡屋」のモデル・西村屋

私たちが昨夜止まった仙石原は眼下にあった。そして仙石原を囲む幾つかの小高い山も丘陵もこの高処から見ると、一様にその高度を失って仙石原をそのうちに包んだ大きい平坦な原野に見えた。右手の方は私たちの坐って居る山の続きである外輪山が蜿蜒として大きくその原野を抱くように迂回して、遠くの蘆ノ湖は小さい水溜りといった貧しい感じだった。

「西岡屋」のモデル・西村屋
芦ノ湖を遠望

「西岡屋」のモデル・西村屋
山頂の金時茶屋

「いまはカンコが出ているの。味噌汁の中へ入れると美味しいわ。大抵毒消しに油を一、二滴入れるの。来月からは、チイタケ、ホウキタケ、鼠タケ」
そうした山の生活に必要な知識を、彼女は、小学校の六年生の時亡くなったという富士山の強力だった父親から、教わっているようであった。
彼女は父親が亡くなる前に、父母や兄妹たちと一緒に一家五人で山に住んだことがあり、幼時の、その時の山の生活の楽しさが忘れられないで、二十三年四月から一人でこの山の生活を始めたということだった。


「西岡屋」のモデル・西村屋
「山の少女」のモデル小見山妙子さん
1933(昭和8)年生まれ。14歳から茶屋の切り盛りをするようになったそうです。彼女の父は有名な強力(ごうりき)で、新田次郎の直木賞受賞作「強力伝」のモデルです。

妙子さんは金時茶屋で、いまも、息子の秀峰さんと登山者をもてなしています。
「井上先生は小説のなかでよく書いてくれています」と笑顔を見せてくれました。




古里だより 水無月(二)


新しくなりました!

2017/6/11更新



開催中の「五感であそぶ井上靖の世界」展にあわせて、文学館の入口が変わりました。
井上靖が愛用した満寿屋の原稿用紙とモンブランの万年筆を大きく掲示し、撮影スポットを作りました!
館内は撮影できませんので、ぜひ玄関で記念撮影を。

「西岡屋」のモデル・西村屋


これまで古書 大雄峰(東京)と、英文堂書店(沼津)から寄贈の書籍を閲覧書籍コーナーへ設置していましたが、新たに関係者から寄贈いただき、閲覧書籍が増えました。
初版本、絶版となった単行本、文庫本、関連書籍など多彩なラインナップです。
昔の本の風合いや装丁は味わい深いですね。

「西岡屋」のモデル・西村屋


「五感であそぶ井上靖の世界」展では、作品にまつわる様々なものをみる、きく、さわる、かぐ、味わうといった感覚で、気軽に親しめる展示となっています。
その中で、一番人気なのが「ことばくじ」!
井上靖の100のことばをくじにしたもので、何が出るかはお楽しみ。詩、エッセイ、小説の一節を当館スタッフが選定しました。
くじはおひとつ持ち帰ることができます。
どんなことばが出るでしょうか?

「西岡屋」のモデル・西村屋


「まんがで読む井上靖」ほか、最新情報はfacebook「井上靖文学館」をご覧ください。
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 水無月(一)


子どもたちと「地球上で一番清らかな広場」

2017/6/11更新



先月、出張授業へお邪魔した伊豆市立天城小学校5年生の皆さんが文学館見学に来てくれました。
出張授業では、「井上靖ってどんな人?クイズ」や、天城の子どもたちへ贈った詩「地球上で一番清らかな広場」について、みんなで考えながら読みました。
この日は、伊豆の踊子の冒頭部分と、「地球上で一番清らかな広場」を暗唱し、そのあと館内を見学しました。

「地球上で一番清らかな広場」

地球上で一番清らかな広場。 北に向って整列すると、
遠くに富士が見える。
廻れ右すると天城が見える。

富士は父、天城は母。
父と母が見ている校庭で
ボールを投げる。

誰よりも高く、美しく、
真直ぐに、天にまで届けと、
ボールを投げる。



「前日の野外学習でおぬい婆さんのライスカレー作ったよ!」
「しろばんば、この間もいたね」

「西岡屋」のモデル・西村屋

「自由に書いていいよ」と渡した紙に、こんな句を書いた子も。

「西岡屋」のモデル・西村屋
「しろばんば どこからくるの しろばんば」
天城の夕刻を告げる「しろばんばの唄」の一節を思わせますね。

団体見学や、学校の児童・生徒の皆さんの来館もお待ちしています。
簡単な解説など、希望によって案内の対応もできますので、お気軽にご一報ください。




古里だより 皐月(四)


まんがで読む井上靖~第四話~

2017/5/27更新



生誕110年記念「まんがで読む井上靖」第四話。
湯ヶ島を旅立って、青春放浪の中学編です。

画:江頭路子(えがしら みちこ)
監修:井上靖文学館

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 皐月(三)


新商品、オリジナルグッズ!

2017/5/27更新



当館オリジナルグッズ、瓊花(けいか)の香り付きしおりを好評販売中です。
小説「化石」の一節を抜粋。1枚50円。
瓊花の絵は、絵本作家の江頭路子さんによるものです。

「西岡屋」のモデル・西村屋


川端康成、井上靖、司馬遼太郎…
多くの作家が愛用する満寿屋の原稿用紙がミニメモ帳になりました!
ハガキサイズで1冊250円。メモとしても、一筆箋としても使えます。
現在、井上靖が愛用した緑の罫線の原稿用紙を展示中ですので、ぜひご注目ください。

「西岡屋」のモデル・西村屋


生誕110年を記念して、藤澤全氏(元・日本大学教授)の研究書「井上靖『猟銃』の世界」が刊行されました!
「猟銃」は、三人の女性の手紙から一人の男の姿が浮かび上がる、初期の短編小説。伊豆市の滑沢渓谷や熱海が舞台として描かれています。
昨春には、中谷美紀主演舞台として再演されました。

書名:「井上靖『猟銃』の世界」
著者:藤澤全(ふじさわ・まとし)
発行:2017年4月、大空社出版
仕様:四六版・並製・169ページ
定価:1600円+税

「西岡屋」のモデル・西村屋


そのほか、当館発行の「井上靖童話」や井上靖の文庫本、関連書、書店では手に入らない研究書、『しろばんば』に登場するお菓子まで、幅広く取り揃えております。

最新情報はfacebook「井上靖文学館」をご覧ください。
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 皐月(二)


新しいパンフレット、新しいことば

2017/5/13更新



当館のパンフレットは四種類あり、それぞれ別のことばを掲載しています。
前回は「富士山」をテーマにした四種類でしたが、今月半ばから「若き日の井上靖」をテーマとしたパンフレットとなります。
今回掲載の作品は、詩「瞳」「友」「野分(一)」と小説「通夜の客」の一節です。


「瞳」

七歳ごろであったろうか。明るい春の、風の強い日、私は誰かに背後から抱いて貰って、庭の隅の古井戸を覗き込んだことがある。苔むした古い石組と生い茂った羊歯(しだ)、ひやりとする冷たい空気、地上から落ち込んだその方形の空洞の底には、動かぬ水が銹びた鏡のように置かれてあった。思うに、私の生涯に大きい関係をもつ何ものかが、初めて私の軀(からだ)の中に這入り込んできたのはその時であった。


「西岡屋」のモデル・西村屋


ささやかな言葉のお土産をお持ち帰りください。




古里だより 皐月(一)


出張授業「出発」

2017/5/13更新



昨年に続き、伊豆市立天城小学校5年生・6年生と、三島市立坂小学校6年生の出張授業を行いました。
学校図書の教科書『「国語」6年 上』の巻頭を飾る詩「出発」。一昨年、井上作品が10年ぶりに教科書に登場したことを契機に、学校へお邪魔しています。

天城小5年生への授業は今年が初めてです。これから地域学習が始まるということで、「井上靖ってどんな人だろう」、「天城とどんなつながりがあるのかな」という話をしました。
さらに、天城の子どもたちへ贈った詩「地球上で一番清らかな広場」をみんなで考え、朗読しました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

「地球上で一番清らかな広場」

地球上で一番清らかな広場。 北に向って整列すると、
遠くに富士が見える。
廻れ右すると天城が見える。

富士は父、天城は母。
父と母が見ている校庭で
ボールを投げる。

誰よりも高く、美しく、
真直ぐに、天にまで届けと、
ボールを投げる。


天城小と坂小の6年生の授業では、「出発」がどんな場面か想像したり、繰り返し使われている言葉を探しました。
また、詩「出発」と同じく、マラソン競争の場面が描かれている『しろばんば』の一節を読み比べました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

文学館は、未来を担う子どもたちと、読書の楽しみや、地域学習の時間を共有したいと考え、今後も出張授業や出前講座を続けてまいります。
出張授業、団体見学などの希望がありましたら、ぜひご一報ください。

最新情報はfacebook「井上靖文学館」をご覧ください。
https://www.facebook.com/inoue.yasushi.museum




古里だより 卯月(四)


瓊花(けいか)まつりと生誕記念日

2017/4/23更新



遣唐使たちの運命を描いた小説「天平の甍」にちなみ、2013年に植樹した瓊花(けいか)の花。
今月下旬の見ごろに合わせて、瓊花(けいか)まつりを開催いたします。
また、110回目の生誕記念日5月6日(土)は入館料無料となります。


【第4回 瓊花(けいか)まつり】
とき:4/29(土)~5/7(日)
当館オリジナルグッズ、瓊花の香り付きしおりを発売します。
しおりの絵は、三島市在住の絵本作家・江頭路子さんによるものです。
4/29、30、5/3~5/5、5/7は13時~ギャラリートークを開催。


【110回目の生誕記念日】
とき:5/6(土)
終日、入館料無料となります。
先着110名様限定、むかし懐かしいガラポンにご参加いただけます。


「西岡屋」のモデル・西村屋


【瓊花(けいか)】
レンプクソウ科。中国揚州市の市花で、日本では唐招提寺や佐賀県立森林公園など、鑑真ゆかりの地だけに植栽されている珍しい花です。
例年、見頃は4月の下旬から5月初旬。鑑真遷化1250年を記念し、2013年に植樹しました。




古里だより 卯月(三)


まんがで読む井上靖~第三話~

2017/4/23更新



生誕110年記念「まんがで読む井上靖」第三話は、「別れと旅立ち」です。
画:江頭路子(えがしら みちこ)
監修:井上靖文学館

「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 卯月(二)


「五感であそぶ井上靖の世界」展

2017/4/3更新



生誕110年「五感であそぶ井上靖の世界」展が始まりました。

「西岡屋」のモデル・西村屋


「しろばんばに登場する、おばあちゃん自慢のごちそうは?」
「あすなろはどれだろう?」

「西岡屋」のモデル・西村屋

「天平の甍ゆかりの瓊花(けいか)の香りを嗅いでみよう!」

「西岡屋」のモデル・西村屋

見る、聞く、触る、味わう、嗅ぐといった体の感覚を使って、作品の世界に親しめる展示を企画しました。
井上靖の100のことばを選定した「ことばくじ」。
おひとつ言葉のお土産をどうぞ。

「西岡屋」のモデル・西村屋


生誕110年「五感であそぶ井上靖の世界」展
会期:2017年3月16日(木)~9月19日(火)
協力:井上靖ふるさと会
後援:一般財団法人 井上靖記念文化財団




古里だより 卯月(一)


劇団しろばんば
生誕110年記念公演

2017/4/3更新



井上靖生誕110年。
第一弾として、劇団しろばんばによる公演が行われます。
入場無料ですので、お気軽にどうぞ。


生誕110年記念公演
「しろばんば~久保田の人々~」
日時:平成29年4月29日(土・祝)13時30分開演
会場:天城会館劇場ホール
*入場無料
主催:劇団しろばんば
後援:伊豆市・伊豆市教育委員会・井上靖記念文化団・井上靖ふるさと会

「西岡屋」のモデル・西村屋




古里だより 弥生(二)


五感であそぶ井上靖の世界

2017/3/3更新



「真田軍記」展も残すところわずかとなりました。

井上靖生誕110年を迎えた2017年。
当館では、見る、聞く、触る、味わう、嗅ぐといった体の感覚を使って、作品の世界を楽しめる展覧会を開催いたします。
井上靖の100のことばで「ことばくじ」を作りました。誰でも参加できます。


「新しいインキ壜の蓋を開けると、ブルー・ブラックの深海がある。」

「西岡屋」のモデル・西村屋

「五感であそぶ井上靖の世界」展
会期:2017年3月16日(木)~9月19日(火)
協力:井上靖ふるさと会
後援:一般財団法人 井上靖記念文化財団




古里だより 弥生(一)


あすなろ忌のご報告

2017/3/3更新



井上靖を偲ぶ「あすなろ忌」が伊豆市湯ヶ島にて行われました。
今年は命日である1月29日の開催でした。

まずは、熊野山共同墓地にて墓参。
井上家や地元関係者、全国から集まったファンなど約50名が集い、暖かな陽の光を浴びながら手を合わせました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

墓参の後は、天城会館にて井上靖作品読書感想文・感想画コンクール入賞者の表彰式です。
それぞれの思いがことばや絵となって表現されました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

昼食後、午後の部は映画「千利休 本覚坊遺文」上映。
1989年公開、熊井啓監督、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作品です。

気持ちよく晴れた冬の日、天城会館からの富士山を眺めながら作家を偲びました。




古里だより 如月(三)


まんがで読む井上靖~第二話~

2017/2/19更新



生誕110年記念「まんがで読む井上靖」第二話は、「おぬい婆ちゃんと食べもの」です。
朝起きたら、最初に食べるものは?
おぬい婆ちゃん自慢のごちそうって?


「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 如月(二)


まんがで読む井上靖

2017/2/2更新



生誕110年を記念して、今月より「まんがで読む井上靖」の連載を始めます。
第一話は生誕。これから井上靖の生涯をゆっくり紹介していきますね。

画:江頭路子さん(絵本作家・イラストレーター)

「西岡屋」のモデル・西村屋





古里だより 如月(一)


文学館のしごと~その2~
出張授業・出前講座

2017/2/2更新



当館では、学校への出張授業や、図書館などの施設へ出前講座を行っています。
2016年12月には伊豆市立天城中学校2年生の出張授業「井上靖と天城」と、長泉町立図書館の講座「井上靖が遺したもの」を実施しました。

学校図書の中学二年生の教科書に『孔子』と『利休の死』が抜粋掲載されたことを機に、出張授業の運びとなりました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

まずは段落ごとに『利休の死』を読み、「歴史小説とはなにか?」を考えました。
そして後半は、天城中学校と井上靖の関わりを紹介し、クイズをしながらふるさとの作家に親しみました。

「西岡屋」のモデル・西村屋

井上靖は天城中学の校歌を作詞し、生徒会会誌にて「故里美し」を寄稿しました。
天城中学への道「克己坂」は、『あすなろ物語』の「克己」に由来します。

長泉町民図書館の図書館講座「井上靖が遺したもの」では、長泉町と井上靖の関わりを振り返り、 井上作品にどんなメッセージが込められているのか、作品の抜粋を読みながら紹介しました。

2016年は三島市立坂小学校、伊豆市立天城小学校、天城中学校へ出張授業、出前講座は御殿場市民交流センターふじざくら、長泉町民図書館にて開催しました。
当館では、学校からの団体見学も受け付けております。
案内の内容は学校・団体によって対応しますので、事前にご一報ください。




古里だより 睦月(一)


新年のご挨拶

2017/1/8更新



本年もよろしくお願いいたします。

「西岡屋」のモデル・西村屋

今年は井上靖生誕110年、
さまざまな企画を準備しております。

1/29(日)には、伊豆市湯ヶ島にて井上靖追悼「あすなろ忌」を開催予定です。