井上靖のことば

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2018.8.14更新


「夏」



四季で一番好きなのは夏だ。夏の一日で一番好きなのは昼下がりの一刻(ひととき)―、 あの風の死んだ、もの憂い、しんとした真昼のうしみつ刻だ。



詩「夏」からの抜粋
昭和50年7月18日『サンケイ新聞』夕刊の広告欄に発表 井上靖 68歳。
『井上靖全集 第1巻』1995年4月、新潮社へ収録。


2018.8.14更新


「稲の八月」



稲の八月
のびんとする稲の八月

山も木も動かない真夏の昼
見よ、その華々しい稲の挑戦を
真直にのびている葉末は
宣戦の槍の穂先だ
一面の穂先の海だ
おヽ、八月の日光の洪水の中に
稲は只一途にのびんとす



詩「稲の八月」からの抜粋
昭和4年11月1日『日本海詩人』11月号に発表  井上靖 22歳。
『井上靖全集 第1巻』1995年4月、新潮社へ収録。





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