井上靖のことば

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2021.1.12更新


「元日に思う」



幼い頃、どうしてあんなに富士が大きく見えたのであろう。北の空いっぱいに拡って見えた。私たち子供は田圃の畦道に棒杭のように突立って、ひびの切れた手に、白い息を吹っかけながら元日の富士を見た。
    




昭和41年1月1日付け 『東京新聞』  井上59歳
『井上靖全集 第1巻 新潮社 1995年』